相続放棄・故人の借金Q&A
Q 相続放棄した空家の瓦が飛びました。隣家から対応を求められていますが、応じないといけませんか?
A 空家の管理の状況によりますが、通常は隣家に対する管理責任があるとは考えられません。
相続放棄をすれば相続財産の管理義務はなくなります(民法918条1項但書)。
相続放棄後の管理継続義務(民法940条1項)を理由に相続放棄後も対応しなければならないとする考えもありえますが、この管理継続義務は後順位の相続人(または相続財産法人)に対するものであって、それ以外の者(この例で言えば隣家)に対するものではないと考えます。また、民法940条1項は「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に管理継続義務があると定めていますので、空家に全く住んでいないような場合は管理義務はないと言えると思われます。
したがって、相続放棄後に隣家から何らかの対応を求められてもこれに応じる必要は必ずしもありません。ただ、近所付き合いの観点から、こうした求めに応じたほうがよい場合はあるでしょう。
Q 家人(所有者)が亡くなった後、隣の空家が荒れています。どうにかなりませんか?
A まずは空家の所有者の相続人に連絡して対応を求めることになります。
空家の所有者が亡くなった場合、一般的には相続人が空家を引き継ぎますので、相続人に連絡をとって対応を求めることになります。ただ、相続人が相続放棄をしているケースもあります。
なお、道路(公道)に枝が出ているといった場合には道路管理者に連絡して対応を求めるほうが早い場合もあります。
Q 亡くなった弟の借金の請求が来ました。どうしたらよいですか?
A 亡くなった弟さんにみるべき資産がないのなら、相続放棄の手続きをしましょう。
相続放棄は自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内にする必要があります。
亡くなった弟さんに子どもがいれば、その子が相続人になりますが、子がいない場合やその子が相続放棄をした場合には父母、父母がいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
相続放棄の手続きは亡くなった弟さんの最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。詳しくは最寄りの家庭裁判所に確認してみましょう。
Q 一切の財産を相続させるという遺言書がありますが、故人の借金はどうなりますか?
A 相続放棄をしなければ、法定相続人が法定相続分に応じて借金を引き継ぐと考えられます。
例えば、父母、子ども二人の4人家族があり、父が亡くなったとします。父には借金が100万円あったとします。父が、自分の一切の財産を母(父から見れば妻)に相続させるという遺言をしていた場合でも、その遺言の効果が借金にも及ぶのか等疑義があります。基本的には相続放棄をしなければ、父の借金は母が50万円、子どもらが各25万円を引き継ぐと考えたほうがよいでしょう。
*この記事の内容は当職の個人的見解であり、一般論を述べたものです。個別の事案に対する解決策を保証するものではありません。